一般の企業がITで業務効率化をしようとした際、何から始めたらいいでしょうか。
DX?AI?RPA?IoT?いろんなキーワードが聴こえてきますが、まず最初に考えてみて欲しいのは『従業員のパソコンを適切なスペックにすること』です。
パソコンスペックが適切でないために起こりがちなこと
例えば、日常業務の中でこんなことは起きていないでしょうか。
- ZoomやTeamsに使用する際にもたつく。
- 1日の中でパソコンを再起動しなければならないことがある。
- 何かの処理をする際に「待ち」が日常的に起きてる。
上記に心当たりがある場合、適切なスペックのパソコンが導入されてない可能性が高いです。
「適切なスペックでないパソコン」の影響
一般企業ではIT投資にかける負担は大きく、どうしてもパソコン1台あたりのコストなども抑えてしまいがちです。
高額なパソコンと安価なパソコン、何が違うかと言えば性能が違います。
処理の速度、一度にできる作業の量・・・つまり作業にかかる時間が変わってきます。
パソコンを起動する、Excelで資料作成する、ウイルスチェックをする、業務システムにアクセスする、どういった作業をするにもこの性能の差による影響が出てきます。
この差は、低い性能のパソコンを使ってる当人も当たり前すぎて「この作業、時間がかかるんだよね」となんとなく見落としてしまいがちです。
PCのもたつきは業務のもたつき
しかし、このわずかな時間の差、もたつきが業務を邪魔していると捉えることはできないでしょうか。
本来は1つのタスクにかかる時間が5分のところ、低いスペックなPCだと15分かかるとした場合、性能の高いパソコンに比べて「3倍の時間が必要」という計算になります。
その間、使う人間も拘束されますし待ち時間がストレスにもなってきます。
投資を行う側からしたら同じパソコンなので「安い方のマシンでも十分じゃない?」という考えに陥りやすくなりますが、安いパソコンを使うことによる影響は無視できないレベルのものなのです。
時は金なりという言葉もありますが、安いパソコンの導入は初期投資を安く抑える代償として作業者の時間効率をじわじわと削っていってることを意識しましょう。
低スペックのPCは業務効率化の障害にもなりうる
先ほどまでは通常の業務用途に限って説明をしましたが、業務の効率化の際にも低い性能のパソコンは障害となり得ます。
例えば、作業の自動化を行う『RPA』ツールを導入するということは、通常使っているアプリケーションに加えてRPAツールも並行して動かす必要が出てくる(つまり、その分パソコンのリソースを消費する)わけです。
また、Microsoft Teamsのようなコミュニケーションツールを導入しようとなっても『重くてまともに使えない』なんてことになってしまいます(TeamsなどはExcelに比べるとパソコンに対する負荷が高いです)。
パソコンの性能に対して高負荷なことをしようとすると、パソコンがもたつくだけでなく、固まったりエラーが出る原因となり、業務を改善するどころかパフォーマンス低下に繋がりかねないのです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)のような大掛かりなビジネス変革の前に、一人ひとりのパソコンスペックを適切なものにすることが地味ですが大きな一歩となるのです。
数年前、サイボウズが事務員含めて社員にハイスペックのマシンを支給したことが話題になりました。
今も自宅用と在宅用の2台パソコンを支給したり、マウスやキーボードも好きなものを購入するようにしたりとパフォーマンスを上げるための取り組みを継続されているようです。
購入すべきPCの目安
とはいえ、業務に必要十分なパソコンの性能がわからないですし、無条件にパソコンに費用をかけるわけにもいかないのが実情かと思います。
行う業務にもよるので正解はありませんが、パソコン選びの際の気にするべきポイントと目安を以下に記載しておきます。
項目 | 目安 |
---|---|
OS | Windows推奨 |
種類 | デスクトップ・ノートパソコンかは 目的に応じて判断 |
CPU | Core i5、Core i7、Ryzen 5、Ryzen 7 のいずれか ※最低でもCore i3。Celeronは極力避けること |
メモリ(RAM) | 8GB以上 ※可能であれば16GB以上 |
ストレージ | 256GB以上のSSD ※HDDは絶対に避けること |
画面サイズ | お好みで。 フルHD(1920×1080以上推奨) |
それぞれに対する補足も書いておきます。
OS
業務の目的などにもよりますが、よほどのことがなければWindows一択です。
条件を満たすならMacを選んでも良いですが、基本的にコスト面だけでみるとやや割高なところがあります。
Chromebookは低価格で価格に対する動作パフォーマンスは良いですが、Chromeブラウザ以外のことがほぼできない(例えばフル機能のExcelやWordが使えません)という弱点があります。
いざWindowsでしかできない業務が発生したときにPCを買い直すのでは無駄になってしまいますよね。
そういった意味でWindowsをおすすめします。
また、これから導入するのであれば現時点(2022年)での最新OSであるWindows 11搭載PCを選ぶのがおすすめです。Windows 10は2025年でサポート(セキュリティ面の対応)期限を迎えることが決まっています。
ただし、使用しているアプリケーションやシステムがWindows 11に対応してない場合は、Windows 11アップグレード対象のWindows 10マシンにすると良いでしょう。
種類
デスクトップかノートパソコンはお好みで、というところになります。
デスクトップは、持ち運べない代わりに、同価格のノートPCより性能が高い場合が多く、ディスプレイやキーボードなどが独立しているので故障した際などに部品単位での交換が容易に行えます。
ノートパソコンはデスクトップのメリットがない代わりに持ち運びが容易なので、テレワークと出社が混在するような環境では都合が良いでしょう。
参考までに、ノートパソコンでも外部モニタや外付けキーボードを接続することでデスクトップパソコン風に使うことも可能です。
CPU
見極めが難しいところですが、Core i5、Core i7、Ryzen 5、Ryzen 7 のいずれかがおすすめです。
Core i〜はIntel社、RyzenはAMD社のCPUで、それぞれ数字が大きいほど上のグレードとなります。
予算が限られる倍でもできればCore i3を選びましょう。
安価なPCだとCeleronやPentiumという種類がありますが、極力避けた方が後悔することが少ないです。
会社であえて中古品を選ぶことはないと思いますが、再生品などを選ぶ場合は上のルールがうまく当てはまらなかったりするので気をつけましょう(長くなるのでここでは触れないでおきます)。
メモリ
厳密には種類もあるのですが、とりあえずは容量が8GB以上のものを選びましょう。
企業用のパソコンはウィルスチェックや監視ツールなどが裏で動いてる都合でメモリの消費が家庭用のパソコンより多くなる場合があります。可能であれば16GB以上のものにしましょう。
安定性が増すほか、減価償却が済む3年後、5年後でも現役で使える可能性が高いです。
ストレージ
地味に最重要ポイントです。
とにかく、種類が「SSD」のものを選びましょう。義務です。
他に、ハードディスク(HDD)やeMMCといった種類もありますが、容量(数字)の大きさに関係なくこれがSSDかどうかで体感速度に倍以上差が出てきます。
1TB(1,000GB)のハードディスクより128GBのSSDが速いです。
ちなみに、一昔前は「SSDは寿命が短い」などと言われてましたが、現在はほとんど気にする必要はありません。
むしろSSDの方が衝撃に強いといったメリットもあり、ハードディスクより安心して使えると言えるでしょう。
画面サイズ
ノートパソコンの話になりますが、持ち運びやすさなどとの兼ね合いで自由に選んで良いです。
長時間使うのであれば13インチ以上のものを選ぶと良いでしょう。
HDかフルHDかといった解像度の話がありますが、フルHD(1920 x 1080)以上のものを選んでおくと良いでしょう。フルHDのものをHD風に設定して使うことはできますが、HDのものをフルHDにすることはできません。
ズバリ!パソコン選び方のコツは?
ノートパソコンの例で言うと高すぎずパフォーマンスが良い、バランスの取れた価格帯はネット購入価格でおおよそ10万円です。10万円前後のパソコンであれば先ほど書いた条件も概ね満たされているでしょう。
店頭だとやや高かったりするので+2、3万くらいでみておいた方がいいですね。